国民経済計算(GDP統計が含まれる統計集)の資金循環データを、部門統合して、7資産項目・6部門の実証モデルを構築しました。これは計量経済学的な手法を用いて、実際のデータによく当てはまる連立方程式体系として推計したものです。
これを用いた簡単なシミュレーションで以下のことが確認できました。
(1)日銀の国債買い入れで金利が下がることが確認できました。
(2)日銀が国債を買い入れない場合、財政赤字で生まれた新規国債を民間金融機関に買ってもらうためには、金利を上げないといけません。それでも、赤字財政支出で民間の金融純資産が増えることになります。企業や家計は、それらの資金を現金や預金として保有し続けるよりも、借入金の返済や株式・年金の積み増し等に充てることが分かりました。
(3)上記の二つのシナリオの組み合わせとして、政府の赤字支出で発行された国債を、日銀が全て買い入れると金利を低く保つことができます。企業や家計の金融純資産の増分は、(2)の場合と全く同じですから、彼らはその資金を現金や預金として保有し続けるよりも、借入金の返済や他の金融資産の購入などに充てることになります。
(4) 日本が海外に対して経常収支黒字を出すと、海外の金融純資産は減り、日本の企業や人々の金融純資産は増えます。経常収支黒字はマネーストック(M3)を増加させる要因であることが知られています。しかし企業や人々は現預金を手放して、融資・株式・年金などの構成を変化させますので、結果的にマネーストックは少ししか変化しません。
資金循環モデルがうまく動きましたので、今後の課題は、これをマクロ経済モデルと接続することです。ここまでの成果を研究ノートにまとめたものがこちらです。