朴勝俊 Park SeungJoonのブログ

反緊縮経済・環境経済・政策に関する雑文 

クナップ『貨幣の国家理論』に関する概念整理

本稿は2022年11月に新訳が出版された、ゲオルグ・フリードリヒ・クナップの『貨幣の国家理論』(小林純・中山智香子訳、日本経済新聞出版)を読み進める方々の便宜のために、概念整理を試みたものである。貨幣に関して我々が平素使っている用語と、クナップ…

ミクロ経済学のための貨幣循環

youtu.be 制作・解説:朴勝俊(関西学院大学教授) 「ミクロ経済学の貨幣循環」というタイトルで、貨幣と財政の本質をわかりやすく解説した動画です。政府の貨幣発行だけでなく、岸昌三先生の論文「貨幣循環」の事例に基づき、民間の生産活動の営みを支える…

【参考資料】新しいBIS実効為替レート指数

BIS研究者による実質実効為替レートの解説を翻訳しました。全文はPDFファイルをダウンロードしてご覧下さい。なお、翻訳には誤りがありえます。引用のさいは原典をあたってください。 新しいBIS実効為替レート指数 Marc Klau and San Sau Fung 著 朴勝俊 翻…

実質実効為替レートは高いほうがよいのか?

2022年1月26日 朴勝俊著 ■ はじめに 日本経済新聞(日経)が、「円の実力低下、50年前並み、弱る購買力、輸入に逆風 消費者、負担感増す」というタイトルの記事を出しました(2022年1月21日)。記事は冒頭部分で以下のように述べています。 円の総合的な実力…

【みんなのお金の紙芝居シリーズ・ショート】日本のような国で財政破綻が起こらないのはなぜか?ー中・上級者向け解説動画

今回は、積極財政の説明をする必要がある人のための、短かめの10分の動画です。 www.youtube.com 貨幣と財政の本質をとらえた積極財政論の根拠説明の中でも、比較的むずかしい、(1)政府支出と国債発行で貨幣が生まれる、(2)国債は借り換えるもので、それは常…

『100%マネー』第一章・要約 アービング・フィッシャー著(1935年刊)、朴勝俊訳

100%マネー アービング・フィッシャー著、朴勝俊訳 1935年刊 ※文末にPDF版を掲載しています $5 large-size Federal Reserve Bank Note, Series 1918(National Museum of American History - Image by Godot13) はじめに アメリカでは、他のいくつかの国と…

クロス表とベイズの公式に基づく新型コロナPCR検査抑制論の検討(授業用資料)Ver.2 (PDFはVer.4)

日本のPCR検査数(人口比)は先進国で最下位レベルです。ニュージーランドや台湾、韓国、中国などは少数でも感染者が見つかれば大量のPCR検査と隔離を行い、感染ゼロを目指していますが、日本は「専門家」たちがPCR検査の精度が低い、徹底的な検査を行うとニセ…

【翻訳】イベルメクチン:COVID-19という新たな 世界的惨事に対する有効性が示された ノーベル賞受賞の多面的薬剤

サンティン、シャイム、マカロフ、ヤギサワ、ボロディ「イベルメクチン:COVID-19という新たな世界的惨事に対する有効性が示されたノーベル賞受賞の多面的薬剤」翻訳 ver.1 (2021/8/7) 翻訳:朴勝俊(関西学院大学教授) これは,論文が受理された後に,表紙…

【動画】戦後の経済成長を支えた財政投融資

www.youtube.com 戦後の経済成長を支えた財政投融資に注目する動画を作りました。戦後日本の財政はながらく健全財政(一般会計の国債発行ゼロ)だったのに、どうやって戦後の産業復興やインフラ建設などの資金を、政府がまかなうことができたのでしょうか? …

【動画】シンポジウム 「積極財政をどのように考えるか―MMTに関係する報告と討論―」

公益財団法人政治経済研究所のシンポジウムでお話させて頂きました。当日の動画が公開されていますので、ぜひご覧下さい。 公益財団法人政治経済研究所の主催シンポジウム 「積極財政をどのように考えるか―MMTに関係する報告と討論―」 報告者 朴勝俊(関…

【翻訳】緊縮財政とナチスの台頭

欧米諸国の多くは2007-2008 年の金融危機からの債務問題に対応するために、ディープな緊縮財政を追求してきたが、COVID-19 の景気刺激策の結果、再び緊縮財政を行う可能性がある。本コラムでは、1930年代初頭に緊縮財政がいかに社会的苦痛を悪化させ、政治的…

高橋是清講談(昭和編)ー昭和金融恐慌から2.26事件までー

昭和財政における高橋是清(たかはしこれきよ)の業績を皆さんに知っていただくため、講談師の玉田玉秀斎師匠に『高橋是清講談(昭和編)』を続き読みしていただきました。 ※ 玉田玉秀斎オフィシャルページ http://ahs-web.com/tamadagyokusyusai/index.html…

野党は下手なアベノミクス批判より 独自の経済政策を

※この記事は『アジェンダ-未来への課題-』2018年冬号に掲載されたものです ■はじめに 筆者は安倍政権に批判的な立場であるが、「アベノミクス批判」にはあまり関心がない。いわゆる「アベノミクス」は成功か失敗かと問われれば、この「スローガン」は安倍…

【みんなのおカネの紙芝居シリーズ 第2弾】「生産性」の低い企業や労働者を淘汰して、経済を成長させるという考え方は、間違いです! ーデーヴィッド・アトキンソン氏への反論

【みんなのおカネの紙芝居シリーズ 第2弾】「生産性」の低い企業や労働者を淘汰して、経済を成長させるという考え方は、間違いです! ーデーヴィッド・アトキンソン氏への反論 (朴勝俊) 次期首相の最有力候補・菅氏からも信頼されているといわれる、D・ア…

エコノメイト・マクロ計量モデルで消費税減税を試してみた

先日、念願の「エコノメイト・マクロ計量モデル」を入手した。これは過去30年以上の実績があり、販売元の湘南エコノメトリクスが膨大なデータファイルと計量モデルのアップデートを続けてこられているものだ。今回入手したのは基本システムと、マクロ経済モ…

【動画】国の借金を返すとおカネが消える-池上彰さんの「国の借金1100兆円」にこたえて

【みんなのおカネの紙芝居シリーズ 第一弾】「国の借金を返すとおカネが消える-池上彰さんの「国の借金1100兆円」にこたえて」v3 朴勝俊 池上彰さんは「国の借金が1100兆円」などと間違った事実を拡散しています。彼の説明がわかりやすいのは、これまでの「…

消費税・付加価値税の負担と国の幸福度には何の関係もない:OECD諸国データ分析による簡易な考察

■ はじめに 消費税の増税に賛成する人々の中には、消費税が高い北欧諸国の幸福度が高いことを論拠にする人がいる。そうした考えを代表する論考のひとつが、井手英策教授の「全国民に批判されても、僕が「消費税を上げるべきだ」と叫ぶ理由」(現代ビジネス、2…

PCR検査の「正確さ」入門

日本のPCR検査数(人口比)は、4月末に先進国で最下位レベルと指摘され[1]、7月末には世界で159位と[2]、アフリカ諸国よりも少ないです。その理由は、マスコミ等でPCR検査の「不正確さ」が宣伝され[3]、それによって、検査を増やさない政策が正当化されてきた…

太政官札の発行・流通・廃止の経緯 『明治財政史 12巻 通貨(2)、銀行(1)』から学ぶ

2020.6.24 解説・要約:朴勝俊 https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11895319 ■ 解説 太政官札(だじょうかんさつ)は明治元年(1868年)に、新政府によって発行された政府紙幣です(ちなみに太政官は現在の総理大臣に相当する役職です)。それまで…

講談「寛政下(シモ)一揆」江戸近郷1016の農村が町民にクソ反旗を翻した物語

朴勝俊 講談「寛政下一揆」

「構造改革」で労働生産性を向上させることは本当に、「給料安すぎ問題」の解決策なのか?

toyokeizai.net2020/09/11 追記:関連動画とスライドはこちら(説明の図式は若干異なります) parkseungjoon.hatenadiary.com <はじめに> 経営アナリストのデービッド・アトキンソン氏が「MMTでは解決しない「日本人の給料安すぎ問題」 労働生産性向上のた…

新型コロナ禍の今こそ積極的経済政策が必要である -歴史から学ぶ反緊縮政策-

この文章は『現代の理論』(2020年夏号)に寄稿したもの(校正前)です。 季刊・現代の理論 ■ 新型コロナ禍の現状 2020年5月上旬現在、世界は新型コロナウイルスのパンデミックに襲われています。世界各地の医療施設で人員・設備・機器の不足が表面化し、医…

宇都宮けんじ陣営の『補足:地方債の発行について(宇都宮けんじの政策)』に見られる誤解を解きます

先日、以下「補足:地方債の発行について」(以下、「補足」)という文書が、ツイッターを通じて、「宇都宮けんじ 広報」というアカウントから拡散されました。筆者自身は、この「補足」に書かれていることを、選挙戦で超多忙な宇都宮けんじ候補は承知してお…