昭和財政における高橋是清(たかはしこれきよ)の業績を皆さんに知っていただくため、講談師の玉田玉秀斎師匠に『高橋是清講談(昭和編)』を続き読みしていただきました。
※ 玉田玉秀斎オフィシャルページ
http://ahs-web.com/tamadagyokusyusai/index.html
脚本は朴勝俊によるものです。脚色もありますが、基本的には高橋是清の自伝や、彼に関する伝記、小説などを熟読して、できるかぎり史実に基づいて描いたものです。
是清は、江戸時代末期に生を受け、少年時代から米国に留学し(奴隷生活も経験し)、生きた英語を身につけ、小学校もまともに出ていないのに国立大学の英語教師となりました。そして役人となり、芸者のお手伝いにもなり、儲け話に騙され、また役人に戻って外遊し、日露戦争の戦費を調達し、最後は総理大臣や財務大臣を歴任した、不世出の政治家です。
昭和期の高橋是清蔵相の活躍は、昭和金融恐慌の克服と、積極財政によって日本経済を世界大不況からもっとも早く脱却させたことで、頂点を極めます。
底の浅い財政破綻論者は、日銀の国債引き受けを用いた積極財政を、その後の日本の軍国化や大戦を引き起こした禁じ手だった、などと批判しますが、この講談を聞いていただくと、それが誤りであることが理解できるでしょう。世界不況期の金本位制復帰と緊縮財政が、日本の運命を誤らせました。蔵相に返り咲き、金本位制を停止し、大不況からの脱却を果たした高橋は、ただちに健全財政主義に転換し、自らの命を賭けて軍部の予算要求に抵抗するのです。高橋の運命やいかに!それは次の講釈で。
第一幕「昭和金融恐慌」
第二幕「井上準之助の緊縮財政」
第三幕「高橋財政(前半)」
第四幕「井上対高橋 貴族院aでの大論争」
第五幕「高橋財政(後半)」
第六幕「藤井の戦死」
第七幕「是清の最期」
<参考文献>
幸田真音(2017)『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債【上下合本版】』角川e文庫
鈴木隆(2012)『高橋是清と井上準之助 インフレか、デフレか』文春新書
スメサースト、リチャード(2010)『高橋是清 日本のケインズ―その生涯と思想』東洋経済新報社
高橋是清(1976)『高橋是清自伝(上)』上塚司編、中公文庫
高橋是清(1976)『高橋是清自伝(下)』上塚司編、中公文庫
高橋是清・井上準之助(1932)『国民に問ふ―金輸出再禁止是非―』明治図書出版協会編輯部
松本崇(2012)『恐慌に立ち向かった男 高橋是清』中公文庫