【みんなのおカネの紙芝居シリーズ 第一弾】「国の借金を返すとおカネが消える-池上彰さんの「国の借金1100兆円」にこたえて」v3 朴勝俊
池上彰さんは「国の借金が1100兆円」などと間違った事実を拡散しています。彼の説明がわかりやすいのは、これまでの「常識」に合致しているからです。しかし、お金や経済の真相は「常識」では捉えられないのです。
正しい経済の仕組みを短時間で分かり易く解説します。
※v3では、スライド19(14:07~15:50)をv2からさらに発展させました。他にもご意見を受けて、若干の修正を加えています。
※Prof Nemuroという方がこの動画をよくご覧になって批判的に検討して下さったようです。お忙しいなかのご対応を感謝します。
ご批判の点は、主に以下の3点のようです。
(1)明治初期の紙幣の話が「事実と異なる」
(2)財政支出と国債発行のプロセスが「現実とは異なる」、「民間銀行と中央銀行は人々(民間非銀行部門)⇄政府のカネのやり取りを仲介しただけでおカネは生まれていない」
(3)「税金を取って、国債を返す(償還する)って、いいこと?」と論じているが、「おカネは納税者から国債保有者に移転しただけで全体では減っていない」
(1) については、そもそも明治初期(ごく初期)の紙幣の話が「たとえ話」であることは明白だった思っていたのですが、「事実の記述」と見なして批判をいただくことがあることが分かりましたので、「たとえ話」だと明言することとします。事実を知りたい方は、Prof Nemuroさんのご解説、および以下の拙ブログを参考になさってください。
https://parkseungjoon.hatenadiary.com/entry/2020/07/14/142008
いずれにせよ、第1期と第2期(明治2年9月まで)で支出の大部分が政府紙幣でまかなわれたことは、Prof Nemuroが示して下さった図からも明白です。また彼は、それ以降に政府が地租などの税金をとっていることが「安定財源の確保である」としていますが、これは解釈の相違に過ぎません。
(2)と(3)につきましては、Prof Nemuroさんは民間の金融部門ではなく、非金融部門(一般企業や人々)が引き受ける国債(個人向け国債等)を例に出して、国債発行による政府支出でお金が増えないこと、徴税による国債償還でおカネが減らないことを論じていますが、非金融部門が買う国債なら、そうなることは当たり前です。金融部門が保有する国債の場合は私の説明が当たります。Nemuroさんが引用した文に「この国債を市中銀行が引受けた場合には、銀行の対政府信用創造が行われるわけで、・・・・・・MS総量は市中銀行の国債引受け分だけ増えることになる。これが個人・企業等非銀行による国債引受けのケースとの決定的な違い」とある通りで、むしろ私の説明の正しさを補完して下さっています。
動画では、金融機関が購入する国債についてしか論じていませんが、それは初学者のためにお話をシンプルにするために、非銀行が保有する国債を捨象しているためです。ちなみに、日本銀行「国債等の保有者別内訳(令和2年3月末(速報))」を見ると、国債約1033兆円のうち、日銀47.2%、銀行等14.4%、生損保等21.1%、公的年金3.9%、年金基金3.1%、海外7.7%、家計1.3%、その他1.0%、一般政府0.3%となっています。
いずれにせよ、Prof Nemuroさんには、理解を深めるきっかけを与えてくださって改めて感謝を申し上げます。